階段で膝が痛いのはなぜ?
変形性膝関節症の初期サインかも

「以前は平気だった駅の階段が、最近なんだか辛くなってきた」
「降りる時に膝がガクッとする、あるいはズキッとした痛みを感じる」
日常の何気ない動作である階段の昇降。そこで感じる膝の違和感は、膝の関節軟骨がすり減り始める**「変形性膝関節症(へんけいせいしざかんせつしょう)」**の初期サインかもしれません。
膝の痛みは、放置すればするほど進行し、将来の歩行に大きな影響を及ぼします。今回は、なぜ階段で痛みが出るのかというメカニズムから、見逃しがちな初期症状、そして当院で行っている治療法までを詳しく解説します。
なぜ「階段」で膝に痛みが出るのか?
平坦な道を歩いている時はそれほど痛くないのに、階段になると急に痛みを感じるのには、明確な理由があります。それは、階段動作が膝関節に与える**「負荷の大きさ」**です。
昇る時の負荷:強力な筋肉の収縮
階段を昇る際、私たちの体は重力に逆らって体重を上の段へ持ち上げなければなりません。この時、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が非常に強く収縮します。
この筋肉の収縮により、膝のお皿(膝蓋骨)が太ももの骨(大腿骨)に強く押し付けられます。もし軟骨が少しでもすり減っていると、この強い圧迫がダイレクトに神経を刺激し、痛みとして現れるのです。
降りる時の負荷:体重の約5〜7倍の衝撃
実は、昇りよりも「降り」の方が膝への負担はさらに大きくなります。階段を降りる瞬間、片方の膝には体重の約5〜7倍もの衝撃がかかると言われています。
健康な膝であれば、厚みのある軟骨や半月板がクッションの役割を果たし、筋肉がブレーキをかけてその衝撃を吸収してくれます。しかし、変形性膝関節症の初期段階では、このクッション機能が低下し始めているため、衝撃を逃がしきれずに骨や周囲の組織がダメージを受けてしまうのです。
変形性膝関節症とは:膝の中で何が起きているのか
変形性膝関節症は、長年の使用や加齢、筋力の低下などによって、膝関節のクッションである「軟骨」が徐々にすり減っていく病気です。
軟骨自体には神経が通っていないため、少しすり減っただけでは痛みを感じません。しかし、軟骨がすり減って削りカスが関節内に飛び散ると、関節を包んでいる「滑膜(かつまく)」という組織がそれを異物と判断して炎症を起こします。この炎症こそが、膝の「痛み」や「腫れ」の正体です。
さらに進行すると、骨同士が直接ぶつかり合うようになり、骨の端に「骨棘(こつきょく)」というトゲのような突起ができたり、骨自体が変形して「O脚」が目立つようになったりします。
見逃さないで!変形性膝関節症の
「初期症状」チェックリスト
変形性膝関節症は、急激に悪化するのではなく、数年、数十年かけてゆっくりと進行します。以下の項目に一つでも当てはまるものがあれば、初期段階に入っている可能性があります。
- 動き始めの違和感:
朝起きて布団から出る時や、椅子から立ち上がる時に、膝が「重い」「こわばる」と感じるが、少し動くと楽になる。 - 階段の昇り降りの痛み:
特に「降り」の際、膝がガクガクしたり、特定の角度でズキッとしたりする。 - 正座がしにくくなる:
膝の裏が突っ張る感じがしたり、正座をしようとすると膝の前に圧迫感がある。 - 膝から音がする:
膝を曲げ伸ばしした時に「ミシミシ」「パキッ」といった音が鳴る。 - 腫れや熱感:
左右の膝を比べた時に片方だけ膨らんでいる、あるいは触ると少し熱い感じがする。
特に「動き始めは痛むが、動いているうちに痛みを忘れてしまう」という状態は、初期の典型的なパターンです。ここで「治った」と勘違いして放置してしまうことが、進行を早める原因となります。
放置するとどうなる? 進行のステージ
変形性膝関節症は、大きく分けて以下の3つのステージで進行します。
初期ステージ
階段の昇降時や動き始めにだけ痛みが出ます。軟骨のすり減りはわずかですが、関節内に炎症が起きやすい状態です。この段階で適切なケアを始めれば、進行を食い止めることが十分に可能です。
中期ステージ
痛みがなかなか引かなくなり、平坦な道を歩く際にも支障が出てきます。膝を完全に伸ばすことや、深く曲げることが困難になります。炎症が強くなると「膝に水が溜まる(関節水腫)」という症状も見られるようになります。
末期ステージ
軟骨がほとんどなくなり、骨と骨が直接ぶつかり合います。歩行そのものが困難になり、安静にしていても疼くような痛みを感じることがあります。生活範囲が狭まり、外出が億劫になることで、全身の筋力低下や認知機能への影響も懸念される状態です。
山本整形外科でのアプローチ:手術をしないための治療
当院では、できる限り手術をせずに、患者様が自分自身の足で歩き続けられるための「保存療法」に力を入れています。
精密な診断(レントゲン・エコー・MRI)
まずはレントゲンで骨の隙間や変形の程度を確認します。また、当院では超音波(エコー)検査を積極的に活用しています。エコーでは、レントゲンに写らない「炎症の程度」や「水の溜まり具合」「靭帯・筋肉の動き」をリアルタイムで確認できるため、痛みの原因をより正確に特定できます。MRIが必要と判断した場合は連携の医療機関にご紹介いたします。
ヒアルロン酸注射
膝の潤滑油であるヒアルロン酸を関節内に注入します。これにより、関節の動きを滑らかにし、炎症を抑えて痛みを和らげる効果が期待できます。
専門的なリハビリテーション
理学療法士によるリハビリが非常に重要です。膝の痛みの原因は膝そのものだけでなく、股関節の硬さや足首の不安定さ、そして「歩き方の癖」にあることが多いからです。個々の身体の状態に合わせ、負担の少ない歩き方や筋力トレーニングを指導します。
装具療法(インソール作成)
O脚傾向がある方には、靴の中に敷くインソール(足底板)を作成します。重心を外側から内側へ調整することで、膝の内側にかかる負担を劇的に軽減させることができます。
自宅でできる「膝を守る」セルフケア
治療と並行して、日常生活での工夫も欠かせません。
- 太ももの筋力アップ: 仰向けに寝て片足を伸ばしたまま10cmほど上げる「足上げ運動」は、膝に負担をかけずに大腿四頭筋を鍛えることができます。
- 体重管理: 体重が1kg減れば、階段の降りで膝にかかる負担は5kg以上減ります。無理のない範囲で食事や運動を見直しましょう。
- 膝を冷やさない: 冷えは血行を悪くし、痛みを増強させます。お風呂でゆっくり温めたり、サポーターを活用したりして保護しましょう。
- 階段の歩き方の工夫: 昇る時は「痛くない方の足」から、降りる時は「痛い方の足」から踏み出すようにすると、膝への負担が分散されやすくなります。
まとめ:膝の痛み我慢しないでください
「もう年だから階段が辛いのは当たり前」と諦めてはいませんか?
階段での痛みは、膝が発している重要なサインです。変形性膝関節症は早期に発見し、適切なリハビリや治療を開始することで、その進行を何年も、何十年も遅らせることができます。
「旅行に行きたい」「孫と一緒に歩きたい」「いつまでも自分の足で買い物に行きたい」
そんな当たり前の日常を守るために、少しでも膝に不安を感じたら、ぜひ鶴橋。玉造の整形外科、山本整形外科にご相談ください。私たちは、あなたの膝のパートナーとして、最適な解決策を一緒に考えていきます。
