野球肩とは?大阪鶴橋の整形外科クリニックが徹底解説

コラム

野球肩とは?大阪鶴橋の整形外科クリニックが徹底解説column

2025.07.07
前十字靭帯

野球肩は、野球の投球動作によって肩に痛みが生じる病態の総称です。
特に、投球動作を繰り返すことで肩関節周囲の組織に過度な負担がかかり、炎症や損傷を引き起こします。
成長期の子どもからアマチュア、プロの選手まで、幅広い年代の野球選手に見られる怪我であり、適切な診断と治療、そして予防が非常に重要になります。

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野球肩とは?

野球肩は、単一の疾患ではなく、「腱板炎」「インピンジメント症候群」「関節唇損傷」「リトルリーグ肩(上腕骨近位骨端線離開)」など、肩の様々な部位に起こる障害の総称です。投球動作は、肩関節、肩甲骨、体幹、下半身の連動によって行われる全身運動ですが、特に肩関節は、投球の際に最も大きなストレスを受ける関節の一つです。

野球肩の主な原因

野球肩の最大の原因は、投球動作の繰り返しによる肩への過剰な負担です。 具体的には、以下の要因が複合的に関与していると考えられます。

  • 投球数の多さ・投げすぎ

    試合や練習での過度な投球数は、肩に休息を与える間もなく負担を蓄積させます。特に、成長期の子どもは骨や関節が未熟なため、大人よりも少ない投球数でも損傷しやすい傾向にあります。
    複数ポジションを兼任することで投球数が多くなるケースも少なくありません。

  • 悪い投球フォーム

    肩や体幹、下半身の連動が不十分なフォーム、腕の振りすぎ、無理なオーバースロー、サイドスロー、アンダースローなど、特定の関節に負担が集中しやすいフォームは、肩へのストレスを増大させます。
    特に、体の開きが早すぎる、体重移動ができていない、腕が遅れて出てくるなどのフォームは、肩のインピンジメント(衝突)や関節唇への負担を増加させます。

  • 身体の柔軟性や筋力不足

    肩甲骨周囲や股関節、体幹の柔軟性が低いと、投球動作で全身を十分に活用できず、結果として肩への負担が増大します。
    肩のインナーマッスル(腱板筋)や体幹、下半身の筋力不足も、投球動作の安定性を損ない、肩へのストレスを増やす原因となります。

  • 不適切な球種や指導

    成長期の子どもが、肩への負担が大きい変化球(特に急激なスライダーなど)を多投することや、不適切な指導により無理なフォームで投げ続けることも原因となります。

  • 休息不足

    十分な休息が取れないまま練習や試合を続けると、疲労が蓄積し、怪我のリスクが高まります。

野球肩の主な症状

野球肩の症状は、損傷部位や重症度によって様々ですが、共通して肩の痛みが挙げられます。

  • 投球時の痛み

    最も特徴的な症状で、特に投球の加速期、リリース時、またはフォロースルー時に肩の前面、側面、あるいは後方に痛みを感じます。

  • 安静時の痛み

    重症化すると、投球時だけでなく、普段の生活で腕を上げたり、肩を動かしたりするだけでも痛みを感じることがあります。夜間に痛みが強くなることもあります。

  • 肩の可動域制限

    腕を真上に上げにくい、後ろに回しにくいなど、肩の動きに制限が生じます。

  • 圧痛

    肩の前面、上部、後面など、特定の部位を押すと痛みを感じます。

  • 脱力感や筋力低下

    腱板損傷などがある場合、肩に力が入らない、あるいは投球のスピードが落ちるなどの症状が出ることがあります。

  • クリック音や引っかかり感

    関節唇損傷などがある場合、肩を動かすとカクカクとした音や引っかかりを感じることがあります。

成長期の子どもでは、痛みを我慢して投げ続けてしまうケースも少なくありません。特に肩の痛みが持続する場合や、投球後に痛みが強くなる場合は、すぐに専門医の診察を受けることが重要です。

野球肩の代表的な病態

野球肩には様々な病態が含まれますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。

  • 腱板炎/インピンジメント症候群

    肩を上げる際に、肩の骨(上腕骨頭)と肩峰(肩甲骨の一部)の間で、腱板(肩のインナーマッスル)が挟まり炎症を起こす状態です。投球動作の繰り返しで起こりやすく、特に痛みが投球の加速期に現れることが多いです。

  • 関節唇損傷(SLAP損傷など)

    肩関節の安定性を高める軟骨組織である関節唇が、投球動作の繰り返しによって剥がれたり、損傷したりする状態です。投球時に「引っかかり」や「クリック音」を感じたり、力が入りにくくなったりすることがあります。

  • リトルリーグ肩(上腕骨近位骨端線離開・障害)

    成長期の子どもに特有の野球肩です。上腕骨の成長軟骨(骨端線)が、投球によるストレスで炎症を起こしたり、剥がれたりする病態です。骨が未成熟な時期に過度な投球をすることで起こり、早期の投球中止が必須です。放置すると成長障害につながる可能性もあります。

  • 上腕骨骨頭骨壊死

    稀ではありますが、成長期に過度な負担が続くと、上腕骨の骨頭に血行障害が起こり、骨が壊死してしまうことがあります。重症化すると手術が必要になります。

野球肩の診断

診断は、問診で痛みの部位や状況、投球歴などを詳しく伺い、視診、触診で肩の状態を確認します。加えて、以下の画像検査を組み合わせて行われます。

  • レントゲン検査

    骨の異常、特に成長期の骨端線の状態(リトルリーグ肩の診断)や、骨棘の有無などを確認します。

  • MRI検査

    腱板、関節唇、関節包などの軟部組織の状態を詳細に評価できる最も重要な検査です。炎症の程度や損傷の有無を確認できます。

  • 超音波(エコー)検査

    リアルタイムで腱や筋肉の状態を観察でき、動的な評価も可能です。腱板炎や滑液包炎などの診断に役立ちます。

野球肩の治療

野球肩の治療は、病態や重症度、年齢、活動レベルなどによって異なりますが、原則として保存療法が基本となります。

  • 投球中止・安静

    最も重要な治療法です。痛みの原因となっている投球動作を完全に中止し、肩に負担をかけない期間を設けることで、組織の回復を促します。

  • アイシング

    急性期の痛みや炎症に対して、炎症を抑えるためにアイシングを行います。

  • 薬物療法

    非ステロイド性消炎鎮痛剤の内服や外用薬(湿布など)を使用し、痛みや炎症を抑えます。

理学療法(リハビリテーション)

  • 疼痛管理

    炎症が強い時期には、電気療法などで痛みを軽減します。

  • 関節可動域訓練

    肩の動きの制限がある場合は、柔軟性を取り戻すためのストレッチを行います。

  • 筋力強化

    肩のインナーマッスル、肩甲骨周囲筋、体幹、下半身の筋力バランスを整え、投球に必要な全身の筋力を強化します。

  • フォーム指導

    理学療法士やトレーナーによる、肩に負担の少ない効率的な投球フォームの指導が非常に重要です。全身の連動性を高めることで、肩への負担を分散させます。

  • 段階的な投球再開プログラム

    痛みがなくなり、身体が回復したら、徐々に投球数を増やしていくプログラムに沿って慎重に復帰を目指します。

手術療法

保存療法で改善が見られない場合や、重度の関節唇損傷、腱板の完全断裂、関節内遊離体、進行した上腕骨近位骨端線離開(リトルリーグ肩)などがある場合、手術が検討されます。

野球肩の予防

野球肩は、予防が非常に重要な怪我です。以下の点に注意することで、発症リスクを大幅に減らすことができます。

  • 投球数の管理

    ・年齢に応じた投球数制限や休息日を遵守しましょう。特に成長期の子どもには、無理な連投をさせないことが重要です。
    ・複数ポジションを兼任する際は、総投球数が増えすぎないよう注意が必要です。

  • 正しい投球フォームの習得

    ・専門の指導者から、肩や肘、体幹、下半身を効率的に使ったフォームを学ぶことが重要です。
    ・成長に合わせてフォームを修正していく必要もあります。

  • 全身のコンディショニング

    ・肩甲骨、股関節、体幹の柔軟性を高めるストレッチを日常的に行いましょう。
    ・肩のインナーマッスル、体幹、下半身の筋力強化も、肩への負担を軽減するために不可欠です。

  • 適切なウォームアップとクールダウン

    ・投球練習前には、全身のウォームアップと肩・肩甲骨周囲のストレッチを十分に行いましょう。
    ・練習後には、クールダウンとアイシングで疲労回復を図ることが大切です。

  • 疼痛時の早期受診

    ・肩に少しでも痛みを感じたら、無理をして投げ続けず、すぐに練習を中止して整形外科を受診しましょう。「痛みがない=治った」ではないことを理解し、専門医の指示に従うことが重要です。

まとめ

野球肩は、野球を愛する選手にとって避けては通れない課題の一つですが、早期に適切な診断と治療を受けることで、多くの場合は野球活動への復帰が可能です。肩の痛みは身体からの大切なサインであり、決して軽視してはいけません。大阪市鶴橋・玉造の山本整形外科では野球肩に関する診断から治療、リハビリテーションまで、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療プランをご提案いたします。気になる症状がございましたら、お気軽にご相談ください。

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