野球肘とは?大阪鶴橋の整形外科クリニックが徹底解説

コラム

野球肘とは?大阪鶴橋の整形外科クリニックが徹底解説column

2025.06.30
前十字靭帯

野球肘は、野球をすることによって肘に痛みが生じる病態の総称です。
特に投球動作を繰り返すことで肘に過度な負担がかかり、成長期の子どもたちに多く見られます。放置すると将来にわたる野球活動の継続が困難になるだけでなく、日常生活にも支障をきたす可能性があるため、早期の発見と適切な対応が非常に重要です。

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野球肘とは?

野球肘は、正式には「離断性骨軟骨炎」「内側側副靭帯損傷」「滑膜ヒダ障害」など、様々な病態の総称として用いられます。投球動作は、肘関節に大きなストレスをかける複雑な動きです。特に、ボールを投げる瞬間に肘の内側には引っ張る力(牽引力)、外側にはぶつかる力(圧迫力)が同時にかかります。このような力が繰り返し加わることで、肘の骨、軟骨、靭帯、腱などに炎症や損傷が起こるのが野球肘です。

野球肘の主な原因

野球肘の最大の原因は、投球動作の繰り返しによる肘への過剰な負担です。 具体的には、以下の要因が複合的に関与していると考えられます。

投球数の多さ・投げすぎ

試合や練習での過度な投球数は、肘に休息を与える間もなく負担を蓄積させます。特に、成長期の子どもは骨や関節が未熟なため、大人よりも少ない投球数でも損傷しやすい傾向にあります。
学童野球での球数制限がないことや、複数ポジションを兼任することで投球数が多くなるケースも少なくありません。

悪い投球フォーム

肘や肩、体幹の連動が不十分なフォーム、手投げのようなフォーム、腕を過度に振り回すフォームなどは、特定の関節に負担が集中しやすくなります。
特に、体の開きが早すぎる、体重移動ができていない、肘が下がっているなどのフォームは、肘の内側や外側に不自然なストレスをかけます。

身体の柔軟性や筋力不足

肩甲骨周囲や股関節の柔軟性が低いと、投球動作で肩や体幹を十分に活用できず、結果として肘への負担が増大します。
体幹や下半身の筋力不足も、投球動作の安定性を損ない、肘へのストレスを増やす原因となります。

不適切な球種や指導

成長期の子どもが、肘への負担が大きい変化球(カーブやスライダーなど)を多投することや、不適切な指導により無理なフォームで投げ続けることも原因となります。

休息不足

十分な休息が取れないまま練習や試合を続けると、疲労が蓄積し、怪我のリスクが高まります。

野球肘の主な症状

野球肘の症状は、損傷部位や重症度によって様々ですが、共通して肘の痛みが挙げられます。

投球時の痛み

最も特徴的な症状で、特に投球の加速期やリリース時に肘の内側や外側に痛みを感じます。

安静時の痛み

重症化すると、投球時だけでなく、普段の生活で腕を動かしたり、肘を伸ばしたりするだけでも痛みを感じることがあります。

肘の可動域制限

肘が完全に伸びない、あるいは曲がらないといった動きの制限が生じます。特に肘の内側型野球肘では、肘が完全に伸びなくなる「最終伸展制限」が見られます。

圧痛

肘の内側や外側、あるいは後ろ側など、特定の部位を押すと痛みを感じます。

腫れや熱感

炎症が強い場合、肘が腫れたり、熱を持ったりすることがあります。

クリック音や引っかかり感

骨や軟骨の損傷がある場合、肘を動かすとカクカクとした音や引っかかりを感じることがあります。

成長期の子どもでは、痛みを我慢して投げ続けてしまうケースも少なくありません。特に肘の痛みが持続する場合や、投球後に痛みが強くなる場合は、すぐに専門医の診察を受けることが重要です。

野球肘の種類と代表的な病態

野球肘は、痛む部位によって大きく3つのタイプに分けられます。

内側型野球肘(投球肘)

最も多く見られ、肘の内側に痛みが生じます。投球によって肘の内側に牽引力がかかることで、骨端線炎(骨の成長軟骨の炎症)、内側上顆炎(筋肉の付着部の炎症)、内側側副靭帯損傷などが起こります。
特に、成長期に骨が剥がれてしまう「上腕骨内側上顆裂離骨折」や、骨が変形する「上腕骨内側上顆骨端線閉鎖不全」など、重症化すると手術が必要になる場合もあります。

外側型野球肘(離断性骨軟骨炎)

肘の外側に痛みが生じます。投球によって肘の外側が圧迫されることで、上腕骨小頭の骨や軟骨が損傷します。進行すると、骨の一部が剥がれて関節内を浮遊する「関節内遊離体(関節ねずみ)」となり、肘の引っかかりや可動域制限の原因となります。
これは成長期に特有の重篤な病態で、早期発見・早期治療が非常に重要です。

後方型野球肘

肘の後ろ側に痛みが生じます。投球で肘を強く伸ばす際に、肘頭(肘の先端の骨)と上腕骨がぶつかることで炎症を起こします。骨棘(骨のとげ)が形成されることもあります。

野球肘の診断

診断は、問診で痛みの部位や状況、投球歴などを詳しく伺い、視診、触診で肘の状態を確認します。加えて、以下の画像検査を組み合わせて行われます。

レントゲン検査

骨や成長軟骨の状態、骨端線の開閉状況、骨の変形などを確認します。成長期の子どもの野球肘の診断には必須の検査です。

MRI検査

骨軟骨の損傷、靭帯や腱の損傷、炎症の程度などを詳細に評価できます。特に離断性骨軟骨炎の診断や重症度判定に有用です。

超音波(エコー)検査

リアルタイムで関節や靭帯、筋肉の状態を観察でき、動的な評価も可能です。痛みの原因となっている部位を特定するのに役立ちます。

野球肘の治療

野球肘の治療は、病態や重症度、年齢、活動レベルなどによって異なりますが、原則として保存療法が基本となります。

投球中止・安静

最も重要な治療法です。痛みの原因となっている投球動作を完全に中止し、肘に負担をかけない期間を設けることで、組織の回復を促します。

アイシング

急性期の痛みや腫れに対して、炎症を抑えるためにアイシングを行います。

薬物療法

非ステロイド性消炎鎮痛剤の内服や外用薬(湿布など)を使用し、痛みや炎症を抑えます。

理学療法(リハビリテーション)
疼痛管理

炎症が強い時期には、電気療法などで痛みを軽減します。

関節可動域訓練

肘の動きの制限がある場合は、柔軟性を取り戻すためのストレッチを行います。

筋力強化

肘だけでなく、肩、体幹、下半身の筋力バランスを整え、投球に必要な全身の筋力を強化します。

フォーム指導

理学療法士やトレーナーによる、肘に負担の少ない効率的な投球フォームの指導が非常に重要です。

段階的な投球再開プログラム

痛みがなくなり、身体が回復したら、徐々に投球数を増やしていくプログラムに沿って慎重に復帰を目指します。

手術療法

保存療法で改善が見られない場合や、骨折、重度の靭帯損傷、関節内遊離体がある場合などには、手術が検討されます。
外側型野球肘の離断性骨軟骨炎では、病変の進行度によっては手術が必要になるケースがあります。

当院では手術が必要な場合、提携の医療機関にご紹介いたします。

野球肘の予防

野球肘は、予防が非常に重要な怪我です。以下の点に注意することで、発症リスクを大幅に減らすことができます。

投球数の管理

学童野球では、各連盟が定める投球数制限を遵守しましょう。
連投を避け、十分な休息日を設けることが大切です。
複数のチームやポジションを兼任する際は、総投球数が増えすぎないよう注意が必要です。

正しい投球フォームの習得

専門の指導者から、肘や肩に負担の少ない効率的なフォームを学ぶことが重要です。
成長に合わせてフォームを修正していく必要もあります。

全身のコンディショニング

肩甲骨、股関節の柔軟性を高めるストレッチを日常的に行いましょう。
体幹や下半身の筋力強化も、肘への負担を軽減するために不可欠です。

適切なウォームアップとクールダウン

投球練習前には、全身のウォームアップと肘周りのストレッチを十分に行いましょう。
練習後には、クールダウンとアイシングで疲労回復を図ることが大切です。

疼痛時の早期受診

肘に少しでも痛みを感じたら、無理をして投げ続けず、すぐに練習を中止して整形外科を受診しましょう。「痛みがない=治った」ではないことを理解し、専門医の指示に従うことが重要です。

まとめ

野球肘は、特に成長期の子どもにとって、将来の野球人生を左右する可能性のある重要な病気です。肘の痛みは身体からのサインであり、決して軽視してはいけません。「投げられない痛み」だけでなく、「投げられるが気になる痛み」の段階で受診することが、重症化を防ぐ鍵となります。大阪市鶴橋・玉造の山本整形外科では野球肘に関する診断から治療、リハビリテーションまで、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療プランをご提案いたします。気になる症状がございましたら、お気軽にご相談ください。

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