はじめに
「膝が痛い」「膝を曲げると引っかかる感じがする」——もし、あなたがこのような症状に悩まされているなら、それは半月板損傷(はんげつばんそんしょう)かもしれません。半月板損傷は、スポーツ中の急なひねりや衝撃だけでなく、加齢による半月板の質の変化によっても起こりうる、膝の代表的な疾患の一つです。
この記事では、大阪鶴橋の山本整形外科が半月板損傷の症状、原因、診断、そして最新の治療法から予防法まで、皆さんが疑問に思う点を分かりやすく解説します。ご自身の膝の痛みでお悩みの方、ご家族が半月板損傷と診断された方、半月板損傷について詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください。
半月板とは?膝のクッション材の役割
私たちの膝関節には、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間に、C字型をした軟骨組織が2つあります。これが半月板です。膝の内側にあるものを「内側半月板」、外側にあるものを「外側半月板」と呼びます。
半月板は、膝関節において非常に重要な役割を担っています。
衝撃吸収材(クッション)の役割
歩行や走行、ジャンプなど、膝にかかる衝撃を吸収し、骨や軟骨への負担を和らげます。
安定性の向上
膝関節の適合性を高め、関節を安定させます。
荷重の分散
体重が一点に集中するのを防ぎ、関節全体に均等に荷重を分散させます。
これらの役割により、半月板は膝のスムーズな動きと、関節の健康を保つために不可欠な存在と言えます。
半月板損傷の主な症状
半月板が損傷すると、その程度や損傷部位によって様々な症状が現れます。代表的な症状は以下の通りです。
膝の痛み
損傷部位に一致した痛みを感じることが多く、特に膝を曲げ伸ばしする際や、ひねった時に痛みが強くなります。
引っかかり感、クリック音
膝を曲げ伸ばす際に、何か引っかかるような感覚や、「カクッ」といった音がすることがあります。損傷した半月板が関節に挟まることで起こります。
膝のロック(ロッキング)
損傷した半月板の一部が関節の間に挟まり込み、膝が完全に伸ばせなくなる状態です。強い痛み伴うことが多く、緊急性が高い症状です。
膝に水が溜まる(関節水腫)
半月板の損傷によって関節内に炎症が起こり、関節液が過剰に分泌されることで膝が腫れてきます。
膝の不安定感
膝が「ガクッと」するような感覚や、膝が抜けるような感じがすることがあります。
これらの症状は、日常生活やスポーツ活動に大きな支障をきたす可能性があります。
半月板損傷の原因
半月板損傷は、大きく分けて2つの原因が考えられます。
外傷性(スポーツによる損傷など)
スポーツ中の急な方向転換や、ジャンプの着地、接触プレーなど、膝にひねりや強い衝撃が加わることで損傷します。
特にサッカー、バスケットボール、スキーなど、膝への負担が大きいスポーツで多く見られます。
半月板が最も損傷しやすいのは、膝を曲げた状態でひねる動作と言われています。
前十字靭帯損傷など、他の膝の靭帯損傷と合併することも少なくありません。
変性性(加齢による損傷など)
加齢に伴い、半月板の弾力性が失われ、もろくなることで、軽い衝撃や日常生活の動作でも損傷しやすくなります。
例えば、立ち上がる、しゃがむといった些細な動作でも損傷することがあります。
変形性膝関節症と併発することも多く、診断には注意が必要です。
診断方法
半月板損傷の診断は、問診、診察、そして画像検査を組み合わせて行われます。
問診
どのような状況で膝が痛み始めたか、どのような動作で痛みが増すか、過去の怪我の有無などを詳しくお伺いします。
診察
膝の可動域、圧痛の有無、不安定性などを確認します。半月板損傷に特有の徒手検査(マクマレーテスト、アプレイテストなど)を行うことで、ある程度の損傷部位を推測できます。
画像検査
X線検査(レントゲン)
骨の状態を確認し、骨折や変形性膝関節症の有無などを確認します。半月板自体はレントゲンには写りません。
MRI検査
半月板損傷の診断には最も有用な検査です。半月板の損傷の有無、損傷の部位や程度、他の靭帯や軟骨の状態なども詳細に確認できます。
関節鏡検査
手術を前提とした検査・治療になりますが、直接関節内を観察することで、半月板の損傷状態を正確に把握することができます。
半月板損傷の治療法
半月板損傷の治療は、損傷の程度、症状、患者さんの年齢や活動レベルなどを考慮して、最適な方法が選択されます。
保存療法(手術以外の治療)
症状が比較的軽度な場合や、損傷部位が半月板の外側(血行が良い部分)である場合、また変性性の損傷の場合には、保存療法が選択されることがあります。
安静・固定
膝への負担を軽減し、安静にすることで自然治癒を促します。場合によっては装具を使用することもあります。
薬物療法
痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の内服薬や湿布などが処方されます。
リハビリテーション
膝周囲の筋力強化(特に太ももの前側の筋肉:大腿四頭筋)や、柔軟性の改善、バランス能力の向上など、専門の理学療法士の指導のもと行われます。
注射療法
痛みが強い場合や炎症が強い場合には、ヒアルロン酸注射やステロイド注射が検討されることがあります。
手術療法
保存療法で症状が改善しない場合や、ロッキングなどの重篤な症状がある場合、スポーツ復帰を目指す方などには、手術が検討されます。現在、半月板損傷の手術のほとんどは関節鏡手術という、体への負担が少ない方法で行われます。
関節鏡手術とは、数ミリの小さな穴を膝に開け、そこから内視鏡(関節鏡)や専用の手術器具を挿入して行う手術です。
手術には主に以下の2種類があります。
半月板切除術
損傷した半月板の不安定な部分や、膝の動きを阻害している部分を切除します。
比較的短時間で手術が終わり、術後の回復も早いのが特徴です。
ただし、半月板の機能の一部が失われるため、長期的に見ると変形性膝関節症のリスクが高まる可能性があります。
半月板縫合術
損傷した半月板を縫い合わせて修復する手術です。
半月板の機能を温存できるため、将来的な変形性膝関節症のリスクを低減できる可能性があります。
ただし、損傷部位や損傷形態によっては縫合できない場合があり、術後の回復には切除術よりも時間がかかります。また、再断裂のリスクもゼロではありません。
どちらの手術を選択するかは、患者さんの半月板の状態、年齢、活動レベル、ライフスタイルなどを総合的に判断し、医師と十分に相談した上で決定されます。
当院では手術が必要と判断した場合は提携の医療機関にご紹介しております。
半月板損傷の予防法
半月板損傷は、日頃からの心がけでリスクを低減できる可能性があります。
適度な運動と筋力強化
膝関節を安定させる太ももの筋肉(特に大腿四頭筋)を鍛えることは非常に重要です。スクワットやレッグエクステンションなどが効果的です。
柔軟性の維持
膝関節周辺の筋肉や靭帯の柔軟性を保つことで、膝への負担を軽減できます。ストレッチを習慣にしましょう。
正しいフォームの習得
スポーツを行う際には、専門家から指導を受け、正しいフォームを習得することが怪我の予防につながります。
準備運動とクールダウン
運動前には必ず準備運動を行い、運動後にはクールダウンで筋肉をほぐしましょう。
急な方向転換や無理なひねり動作の回避
膝に負担がかかるような急な動きはできるだけ避けるように意識しましょう。
体重管理
適正体重を維持することは、膝関節への負担を軽減するために非常に重要です。
適切な靴の選択6h>クッション性のある靴を選び、足元から膝への衝撃を和らげることも大切です。
まとめ
半月板損傷は、膝の痛みや機能障害を引き起こす一般的な疾患です。もし、膝の痛みや引っかかり感、ロックなどの症状がある場合は、自己判断せずに、早期に整形外科を受診することが大切です。
大阪市鶴橋・玉造の山本整形外科では半月板損傷の診断から治療、リハビリテーションまで、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療プランをご提案しています。膝の痛みでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。