
交通事故に遭われた後、「首が痛い」「肩がこる」「頭痛がする」といった症状にお悩みではありませんか?これらの症状は、交通事故による首への衝撃が原因で起こる「むち打ち(むち打ち損傷)」の可能性があります。
「むち打ち」は、交通事故の衝撃で首が鞭のようにしなることで、首の骨(頚椎)、靭帯、筋肉、神経などが損傷する病態の総称です。「そのうち治るだろう」と安易に考え放置してしまうと、慢性的な痛みや様々な後遺症に苦しむことになるかもしれません。
このコラムでは、「むち打ち」のメカニズム、多様な症状、適切な治療法、そして放置することの重大なリスクについて詳しく解説します。もしあなたが交通事故に遭い、首の痛みや不調を感じているなら、ぜひ最後までお読みいただき、早期に専門医を受診することの重要性を理解してください。
「むち打ち」とは?事故の衝撃が首に与える影響
「むち打ち」は、医学的な正式名称ではなく、一般的に交通事故などで首が急激かつ予測不能な動きを強いられることで発生する、首周辺の様々な組織の損傷を指す言葉です。具体的には、以下のようなメカニズムで起こります。
交通事故、特に追突事故では、体がシートベルトなどで固定されているにもかかわらず、頭部は慣性力によって大きく前後に揺さぶられます。この際、首はまるで鞭がしなるような動きを強いられ、頚椎の骨、椎間板、靭帯、筋肉、神経などが過度に引き伸ばされたり、圧縮されたり、ねじれたりすることで損傷を受けます。
衝撃の方向や強さ、事故時の体勢、シートやヘッドレストの形状など、様々な要因によって損傷の程度や範囲は異なります。また、受傷直後には症状が現れにくいことも多く、数時間後から数日経って徐々に痛みや不調が現れることも少なくありません。
交通事故以外でも、首が鞭のように急激に動かされることで「むち打ち」に似た症状が出ることがあります。例えば、スポーツ中の衝突や転倒、特に格闘技やコンタクトスポーツ、スノーボードなどで首に強い衝撃が加わった場合です。また、遊園地の激しい乗り物に乗った際や、日常生活での不意な転倒・転落で首を強く捻った際にも起こりえます。
「むち打ち」の多様な症状:首だけでなく全身に及ぶことも
「むち打ち」の症状は、首の痛みだけにとどまらず、全身に様々な不調を引き起こすことがあります。主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
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首の痛み
最も一般的な症状で、首の後ろ側から肩、背中にかけての痛みが多く、首を動かすと痛みが強くなることがあります。
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首の可動域制限
首を回す、傾ける、前後に倒すといった動作が制限され、スムーズに行えなくなることがあります。
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頭痛
後頭部を中心に、締め付けられるような、またはズキズキとした頭痛が現れることがあります。
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肩や背中の痛み・こり
首の痛みに伴い、肩や背中の筋肉が緊張し、重だるさや凝りを感じることがあります。
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めまい・ふらつき
平衡感覚に関わる神経や自律神経が影響を受けることで、めまいやふらつきを感じることがあります。
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吐き気・嘔吐
めまいと関連して、吐き気や嘔吐を催すことがあります。
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手のしびれ・感覚異常
頚椎の神経が圧迫されることで、腕や手、指先にかけてしびれやピリピリとした感覚異常が生じることがあります。
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耳鳴り
原因不明の耳鳴り(キーン、ジーといった音)が起こることがあります。
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視力低下・かすみ目
まれに、自律神経の乱れにより、視力低下や目がかすむといった症状が現れることがあります。
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倦怠感・疲労感
全身のだるさや疲れやすさを感じることがあります。
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睡眠障害
首の痛みや不快感、自律神経の乱れなどにより、寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めたりするなどの睡眠障害が現れることがあります。
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集中力低下・記憶障害
まれに、高次脳機能の一部に影響が出ることがあります。
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精神的な不安定さ
慢性的な痛みや不調により、不安や抑うつといった精神的な症状が現れることがあります。
これらの症状は、受傷直後には軽微でも、数日~数週間かけて徐々に悪化することもあります。また、個人差が大きく、一つの症状だけが現れることもあれば、複数の症状が同時に現れることもあります。
「むち打ち」の分類:損傷の程度と症状の現れ方
「むち打ち」は、その症状や損傷の程度によって、いくつかのタイプに分類されることがあります。
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頚椎捻挫型
最も一般的なタイプで、頚椎の靭帯や筋肉などが損傷した状態です。首の痛みや可動域制限が主な症状です。
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神経根症状型
頚椎の神経根が圧迫されたり、損傷したりすることで、首の痛みだけでなく、肩や腕にかけての痛み、しびれ、脱力感などが現れます。
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バレ・リュー症候群型
自律神経系の機能が障害されることで、めまい、耳鳴り、頭痛、吐き気、動悸、倦怠感など、多岐にわたる症状が現れます。
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脊髄損傷型
まれに、強い衝撃により脊髄が損傷することがあり、手足の麻痺や排泄障害などの重篤な症状を引き起こすことがあります。
これらの分類はあくまで目安であり、実際には複数の型が合併することもあります。
交通事故後の「むち打ち」に対する適切な治療法
交通事故による「むち打ち」の治療は、早期に適切な処置を行うことが、後遺症のリスクを減らし、早期回復につながるために非常に重要です。当院では、患者様の症状や状態に合わせて、以下のような治療法を組み合わせて行います。
初期治療(受傷直後~急性期)
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安静
:炎症と痛みを抑えるため、首をできるだけ動かさずに安静を保ちます。
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頚椎カラー(首のサポーター)の装着
首の動きを制限し、患部を保護することで、痛みの軽減と組織の修復を促します。装着期間は医師の指示に従ってください。
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薬物療法
痛みを和らげるための鎮痛薬、炎症を抑えるための消炎薬、筋肉の緊張をほぐすための筋弛緩薬などを処方します。
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冷却療法
受傷直後の炎症が強い時期には、患部を冷やすことで、腫れや痛みを軽減します。
リハビリテーション(回復期)
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物理療法
温熱療法(ホットパック、マイクロ波など)や電気刺激療法(低周波治療、干渉波治療など)を行い、血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、痛みの緩和を図ります。
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手技療法
専門の理学療法士や柔道整復師による、丁寧なマッサージやストレッチ、関節の可動域を改善する手技療法を行うことがあります。
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運動療法
痛みが軽減してきたら、首や肩周りの筋肉を強化し、失われた関節の可動域を取り戻すためのリハビリテーションを開始します。個々の状態に合わせた運動プログラムを作成し、丁寧に指導します。
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ストレッチ
首や肩周りの筋肉の柔軟性を高め、可動域を広げます。
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筋力トレーニング
首や肩甲骨周りのインナーマッスルを強化し、首の安定性を高め、再発を予防します。
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姿勢矯正
正しい姿勢を保つための指導を行い、首への負担を軽減します。
その他の治療
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神経ブロック注射
痛みが強い場合や、他の治療法で効果が見られない場合には、痛みの原因となっている神経周囲に局所麻酔薬などを注射する神経ブロック注射を検討することがあります。
「むち打ち」を放置することの重大なリスク:後遺症と日常生活への影響
交通事故後の「むち打ち」を「そのうち治るだろう」と安易に放置してしまうと、慢性的な痛みや神経症状といった後遺症が残り、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
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慢性的な首の痛み
痛みがなかなか引かず、数ヶ月、数年と続くことがあります。
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頭痛やめまい
自律神経系の機能異常が持続し、日常生活に支障をきたすほどの頭痛やめまいに悩まされることがあります。
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手のしびれや麻痺
神経の圧迫が続くことで、手のしびれが慢性化したり、筋力低下による麻痺が生じたりすることがあります。
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首の可動域制限
首の動きが制限されたままになり、日常生活における様々な動作が困難になります。
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精神的な苦痛
長引く痛みや不調は、精神的なストレスとなり、抑うつ状態や不安障害を引き起こすことがあります。
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仕事や学業への影響
慢性的な痛みや集中力低下などにより、仕事や学業に支障をきたすことがあります。
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後遺障害
症状が改善せず、後遺障害として認定される場合もあります。
これらの後遺症は、治療が長期化したり、完全に痛みが取りきれなくなったりする可能性があります。そのため、交通事故に遭い、首に少しでも痛みや違和感を感じたら、自己判断せずに、早期に整形外科を受診し、適切な診断と治療を受けることが非常に大切です。交通事故後の首の痛みは、迷わず専門医へ
交通事故による「むち打ち」は、放置せずに早期に適切な治療を受けることが、後遺症のリスクを最小限に抑え、スムーズな回復への最も重要な一歩です。
当院では、交通事故による「むち打ち」の治療に豊富な経験を持つ専門医が、患者様一人ひとりの症状に合わせた丁寧な診察と適切な治療を行います。また、必要に応じて自賠責保険の手続きについてもサポートさせていただきますので、安心してご相談ください。
大阪で交通事故治療、むち打ちの治療は、鶴橋の山本整形外科へご相談ください。
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